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「フットボールの価値と、指導者が考えるべきこと」 日大問題、米カレッジの現役日本人コーチからのメッセージ

日本大学アメリカンフットボール部の選手による、試合中の悪質な反則行為が大きな社会問題になっています。試合から2週間以上が経過した現時点でも、問題の真相解明には至っていません。「アメフトは危険なスポーツ」という世間のイメージも広まる中で、米カレッジの現役アメフトコーチである小坂恭平氏が、この問題について自身の考えをJCAに寄稿してくれました。


小坂恭平

1988年生まれ。慶應義塾大学アメリカンフットボール部出身。現役時代はオフェンスラインとして活躍。大学卒業後は不動産会社およびマーケティングコンサルタントとして勤務するとともに、社会人Xリーグの東京ガスクリエイターズにてオフェンスコーチ兼ヘッドコーチのアシスタントを経験。2016年の夏に単身渡米。現在はNCAAディビジョン2に所属するオハイオ州のアッシュランド大学(2017年は全米10位)にてアシスタントコーチを務める。地元のNFLチームである、クリーブランド・ブラウンズにてコーチング・インターンも経験。
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私がアメリカでフットボールのコーチとして歩む上で、1つのきっかけとなった記事を紹介させてください。
ボルチモア・レイブンズのヘッドコーチであるジョン・ハーボー氏が、20154月にチームのウェブサイトに寄稿したものになります。高校の指導者にスポットを当てていますが、すべての指導者にとって参考になると私は信じています。
本当は英語で読んでいただきたいのですが、一人でも多くの方に読んでいただきたいと思い、私なりの意訳を付けさせていただきました。

今回、起きてしまったことに対して厳正かつ適切な対処は必要です。ただ、それ以上に重要なのはこれから先をどう描き、どんな行動を取るかだと思っています。
この記事が一人でも多くの方々にとってフットボールの価値をあらためて認識する一助となり、また指導者として関わる一人でも多くの方々にとって自らの使命と役割を振り返るきっかけになりましたら幸甚です。

最後にフットボールが若者の未来を閉ざすものではなく、若者の無限に広がる未来を切り拓くためのものであることを切に願っております。

Ashland University
Assistant Football Coach
小坂 恭平
2018
523

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なぜフットボールが重要なのか。ジョン・ハーボー

フットボールは社会からの攻撃に晒されている。毎日、新聞の見出しやニュースでそのような内容を目にする。医療上の懸念が強く、批判の対象となっている。オバマ大統領は自分に息子がいたらフットボールをさせないと発言した。レブロン・ジェームズですら、公の場で自らの家にフットボールを持ち込ませないと発言した。

社会では次のような質問が繰り返しなされている。一体なぜフットボールをしたいと思うのか?そして、一体なぜ自らの子供にフットボールをさせたいと思うのか?
これらの問いに対する私の答えがこれだ。私はフットボール以上に若者に高い基準を求めている場は存在しないと信じている。

フットボールは苦しく、辛い。規律や自制心、従順さを要求する。そして、優れた人格を形成する。

フットボールは人の人生の象徴である。

フットボールは、若者に対して自らの天井を突き破り、その先まで進むことを求める。文字通り、彼らの肉体的な力強さを試す。自己犠牲とは何かということを示す。自らの役割を全うすることの大切さを教える。我々は自分よりも大切なチームの一部となるために、他人を優先することを学ぶ。そして、仲間を支え、自分を支えてもらい、共に高みを目指すことを学ぶ。
これらは、現代社会の中でなかなか学ぶ機会のないものばかりである。

フットボールは過去にも社会から批判の対象となったことがある。1905年、19人の選手が亡くなり、少なくとも137人が深刻な怪我を負った。これらの大半は、高校や大学で起こった。主要な大学はフットボールがあまりにも危険なため、プログラムを廃止すると言い始めた。
この時に立ち上がったのが当時のルーズベルト大統領だ。彼はハーバード、プリンストン、イェールのコーチとアドバイザーを招集して会議を開いた。彼はフットボールをより安全にプレイする方法を考案した。彼らは幾つの大きな変更を実施し、フォワードパスやワイドレシーバーなどの新しいルールを導入した。これらの変更により、我々の知る現在のフットボールに近い形のスポーツとなった。
我々は進歩し、ルールが変わった。社会が発展し、ゲームも進歩した。

我々のスポーツは、再度大きな転換点を迎えている。脳震盪の問題は正面から向き合う必要のある重要な課題である。
我々は引続きより安全性の高いヘルメットを選手に供給する必要がある。正しいタックル方法を指導する必要があり、それはNFLが率先して行動しなければならない。ルールを変更し、危険な因子をゲームから取り除くことも必要である。
このような変更を加えたとしても、フットボールの重要性が損なわれることはない。むしろ、いくつかの点においては、これまで以上に重要性が増すと言えるのではないか。

フットボールにおいて最も重要なのはユースと高校だと信じている。全体の97%の選手にとっては、高校の試合がフットボール人生の終着点となる。大学で選手をするのは僅かであり、更に少数がプロの世界に足を踏み入れる。
多くの若者は選手生活を終えてから数年後に振り返った時に、スポーツが自分の人生に違いを生んでいたことに初めて気付く。そして、選手だったことを誇りに思うようになる。あなたは高校生としての選手生活を終えた人が、「選手なんてしなければ良かった」と後悔しているのを見たことがあるだろうか。そんな人はいないはずだ。

フットボールの選手は完璧ではない。世の中の誰一人が完璧でないのと同様に。しかし、何百万人といる元選手達は、フットボールから学んだ人生を変えるための原則について、それぞれの体験に基づいて説明できるはずだ。

彼らはフットボールの価値は、フットボールを通じて得られるものであると知っている。

我々の社会においては、高校とそこで指導しているコーチが、極めて重要な役割を担っている。彼らは我々の未来を築いてゆく若者の心と知性を育む最前線に立っている。価値観の衝突は日々生じており、若者は過去にないくらい影響を受けやすい状況にある。
一体何人のユースや高校のコーチが選手達の父親の役目をも果たしているのだろうか。一体何人の母親がチームのコーチに対して、自らの息子に立派な男性になることの意味を示す最後の希望としての役割を期待しているだろうか。きっと我々が理解している以上にいるはずだ。

コーチは、他の人では滅多に教えることができない大切な人生の教訓を若者に教える役割を担っている。コーチはこのような影響力を若者に対して持っており、それは非常に重要かつ稀有なものである。
Billy Graham
は、「一人のコーチが一年のうちに影響を与えられる人数は、平均的な人が一生をかけて影響を与えられる人数よりも多い」と言った。更に私の父が常に口にしていることだが、若者が変わるのに必要なのは、たった一人の自分が彼らのことを信じてあげることだ。私も全く同じことを信じている。

我々の普段の行動は、目先の結果に基づいて判断されていることが多い。しかし、フットボールはそうも都合良くいかない。フットボールは我々に常に課題を与え、より高みを目指すように背中を押す。それは大抵の場合、居心地の悪いものだ。フットボールは常にベストを尽くすことを求める。
これこそが、我々の社会が望んでいるものではないか?

フットボールは素晴らしいスポーツである。フットボールチームは学校や社会に良い変化を促す存在になれるし、そうであることが多い。何百万人という若者がフットボールを通じて、そこでしか学べない教訓を得てきた。フットボールは人々の人生を豊かにしてきた。

だからこそ、フットボールは重要である。

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原文

https://www.irvinefootball.org/news_article/show/507833?referrer_id=952664