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アーロン・ヘルナンデスは若い世代における、最もひどい慢性外傷性脳症(CTE)を患っていた~出典:CNN 2017.11.10

■サマリー

・元NFLのスターであり、殺人罪で服役していたアーロン・ヘルナンデスは、27歳の4月に刑務所で首を吊り、自殺した
・ヘルナンデスの脳には、50代以上に見られるような典型的な損傷があった

■本文

ボストン大学の神経病理学者アン・マッキー博士は、元NFLスターのアーロン・ヘルナンデスの慢性外傷性脳症の診断を9月に発表し、今回ヘルナンデスの脳解剖の結果を発表した。マッキー博士と彼女のチームは、神経変性疾患、正式に慢性外傷性脳症と命名された100人以上の元NFL選手の脳を検査し、ヘルナンデスの症例が特徴的であることを発見した。「彼のように若い世代で、このような損傷がみられたのは初めてです」とマッキー博士は語り、彼のようなタイプの損傷は普通、彼より20歳以上年配者に見られるものだと付け加えた。

ヘルナンデスは刑務所で自殺したとき、27歳であった。彼はステージ3の慢性外傷性脳症であると判明した。最も重篤であるものはステージ4である。マッキー博士は病理学(ラボで見られたような)と彼の行動とを結び付けることができなかったことを慎重に述べ、「関連性が見つからない」と語った。 しかし、彼女は、この病気の影響を最も受けた脳の部分には、記憶、判断、感情を制御する領域が含まれていると指摘した。

マッキー博士は、ヘルナンデスの脳について「どこを見ても、典型的な慢性外傷性脳症だった」と述べた。慢性外傷性脳症は死後にのみ診断することができる。また、この病気は頭部への繰り返される外傷に起因すると考えられている。フットボールにおいて、これは強く頭を打ったことによる脳震盪だけでなく、タックルや転んだ際に脳が頭蓋骨の内部に繰り返し当たることによっても起こる可能性がある。この繰り返される衝撃は、脳の中にたんぱく質の一種であるタウたんぱく質の蓄積をもたらす。この病気には、治療もなく、回復も見込めない。

彼の脳は、彼女のチームがこれまで扱った中でも最も優れた、そして最も損なわれていない検体のひとつであり、慢性外傷性脳症という病気の全体的な理解に大きく貢献するだろうと彼女は述べた。「彼の脳は、今後の研究を進歩させ、加速させることになるでしょう」。研究者たちは、なぜこの病気を発症する人としない人がいるのかということについてまだ明確にできていない。ヘルナンデスのケースでは、マッキー博士は今回の検査により、アルツハイマーやその他の神経変異疾患のリスクと関連しているとされてきたAPOE遺伝子の変異が明らかになったと指摘した。その遺伝子がヘルナンデスの慢性外傷性脳症に甚大な影響を及ばしたかどうかは不明である。

■JCAのPoint of View

脳震とうは心と体にどのような症状を引き起こすのか、その全容が未だに解明されていない病気です。本件も含めて、将来的にうつ病などを発症して亡くなるケースも多く、二次的な障害が問題になっています。米国ではリーグが脳震盪や繰り返される頭部外傷への危険性を隠したとして、元NFL選手が集団訴訟を起こしました。2015年に、頭部外傷に関連した深刻な症状を有する元選手に対し、1人当たり最大500万ドルをNFLが賠償するという判決が出ています。

また、慢性外傷性脳症はラグビーやアメリカンフットボールなどの激しい接触を伴うスポーツの選手によく見られますが、他のスポーツも例外ではありません。NCAAでは2008年から2012の間に30万人の女性アスリートが脳障害で救急治療室に運び込まれたとういデータも報告されており、女性スポーツにおいても深刻な問題となっています。

法政大学アメリカンフットボール部のチームドクターを務める、東京慈恵会医科大学の高尾洋之先生は、「脳震とうになったアスリートについて、多くの脳震とうの症例を詳細に分析することで、今後は選手の復帰に向けたプログラムなども、より精度の高いものを提示できるようになるでしょう。アスリートから得た脳震とうに関する知見を、一般の医療に還元することも期待できます」と、脳震とうについての解明が急務であるとの見解を示しています。