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元ミネソタ大アスレチックディレクターのジョエル・マツーリ氏講演の概要

第5回※SICSports Innovation Conference)ミーティングが9月28日、株式会社ドームで行われました。ゲストとしてお招きした、元ミネソタ大アスレチックディレクターのジョエル・マツーリ氏の講演の概要を共有いたします。

※運営主体は一般社団法人スポーツイノベーションカンファレンス。理念を共有したチームがチームおよび競技の価値向上を目指して、現場レベルから実験的に活動を進めていくカンファレンスです。現在はアメフトで最適化されたモデルを構築し、他競技に横展開すべく、法政大学アメフト部など5チームが参加しています。

【講演テーマ】

米国の大学スポーツの歴史

アスレチックデパートメントの役割

日本における大学スポーツのモデル案

■米国の大学スポーツの歴史

・米国の大学スポーツは、常に問題を抱えながら改善を繰り返してきた。

・アメフトは、米国の大学内で発明された唯一の大学スポーツ競技。

・初めて行われたアメフトの試合は、1869年、プリンストン大とラトガース大の一戦。

1890年から1905年の間に330人の学生が、アメフトが原因で命を落とした。

・大学スポーツを中止しようという動きが起こったが、セオドア・ルーズベルト大統領が会議を招集して、その中で様々なルールを決めていった。

1910年にその管理機関はNCAANational Collegiate Athletic Association)と名付けられ、現在でも活動が続いている。

1956年にディビジョン1と2の二つに分かれ、1973年に三つに分かれた。ディビジョンは大学の規模で決められるのではなく、どれだけスポーツにお金を投入しているかで決められる。

・現在のメンバー校数

ディビジョン1=351校

ディビジョン2=312校

ディビジョン3=451校

・最も重要なことは、大学のスポーツプログラムは教育システムの一環であり、競技者は大学の学生代表であるということ。

NCAAは約90の大会を運営している。

・米国で大学スポーツが始まった当初は、今の日本の状況と似ている。学生コーチがボランティアで活動していた。

・現在でもディビジョン2や3では教員がコーチをしたり、渉外業務や広報、マーケティングやファシリティー業務などを兼任したりするのが一般的なモデルだ。100年前の設立当初と同等の指針で運営されている。

・同じようなミッションを掲げ、同じような価値観やビジョンを共有する大学同士が集まり、カンファレンスを形成している。大学はいずれかのカンファレンスに所属し、レギュラーシーズン中はカンファレンス内で対外試合を行う。

NCAAとカンファレンスの違いは、ベースとなる基準を作っているのがNCAA。その上に各カンファレンスの理念に基づいた、厳しい基準が設けられている。

■アスレチックデパートメントの役割

・まずTDATransitional Director of Athletics)を任命し、正式にアスレチックデパートメントが立ち上がったら、ADAthletic Director)を任命する。TDA及びADが最初にやる仕事は、ミッション、ビジョン、バリューを構築すること。

・大学内全体で推進される理想や目標を体現し、スポーツと学業の共存により、学生競技者の成長を助長する環境を作らなければならない。

・大学のスポーツプログラムを通したブランディングにより、大学の認知度向上や、大学の入学者増加に貢献する必要がある。

・変革は簡単ではない。なぜなら、多くの人は現状に快適さを感じていて、変えるということはストレスを伴うからだ。

・現場を変える場合にはwin-winの関係を築く必要がある。ギブ&テイクの観点が必要だ。単純にアメリカをコピーするのではなく、いいところは取り入れてやってほしい。

■日本における大学スポーツのモデル案

・最も重要なステップが、学長の理解を取り付けることだ。学長のリーダーシップの下、大学と一緒になって進めていく必要がある。アスレチックデパートメントを大学のブランドにする。

・大学には様々なステークホルダーがいる。コーチ、アスリート、元アスリート、寄付者、教員、学生、地域住民、地元の有力者など。意思決定のプロセスにすべてのステークホルダーを巻きこむ必要がある。

・ミネソタ大で改革を行った時は、これらのステークホルダーを巻き込んで、13の委員会を結成した。AD個人の取り組みではなく、大学全体として意思決定する、みんなでやるということをアピールした。

・大学スポーツが注目されることを、スポーツと関係のない教授などは嫌がるはずだ。その人たちに対して、研究費が増えたり、優秀な学生が増えたりするというバリューを、しっかり伝える必要がある。

・ミッション、ビジョン、バリュー。これに対して、しっかり目標設定をする必要がある。発信力があり、協力的な競技チームと共に始めていく。

・ニックネーム、マスコット、スクールカラーなどを決めていく。自分たちだけで決めるのではなく、学生を巻き込んで楽しみながらやると効果的だ。

・どのようにお金を持ってくるかという面で、ファンドレージングはとても重要だ。具体的なファンドレージングのポイントとして、卒業生に寄付の癖をつけさせて、習慣化させることは有効だ。ミネソタ大時代に卒業生に対して講演をして、10ドルでもいいから寄付してほしいと訴えた。毎年必ず手紙を送って、彼らのロイヤリティーを喚起した。地元の有力企業、卒業生が経営している企業に対するアプローチも重要だ。

・どのようなコーチを選ぶかは重要だ。良いコーチはチームに良い文化を作る。良いコーチと一緒に取り組んで勝つことが重要だ。

・全米で最も成功したコーチと言われる、UCLAのバスケットボール部のジョン・ウッデンの「成功のピラミッド」は、有名な指導方針の一つだ。

・アメリカは165年をかけて大学スポーツのモデルを作り上げてきた。日本で変革するのは多くの困難があると思うが、一つずつ成功を積み重ねていってほしい。諦めずに忍耐強くやってほしい。