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NCAAマーク・エマート会長の声明 「カレッジバスケットボール委員会」の設置について

先月、大学生や高校生の有望バスケ選手をめぐり、贈収賄の疑いで、大学コーチや選手、家族がFBIによって刑事訴追された件をめぐり、NCAAが再発防止に向けてだした声明とアクションプランを共有します。

■NCAAマーク・エマート会長の声明 要約

「カレッジバスケットボール委員会」の設置について (2017.10.11)

FBIの調査によって明らかになった、カレッジバスケットボールの贈収賄事件に対して、我々は早急にNCAAの組織改革を行う必要がある。元学生アスリートであり、各界で活躍するリーダーによって構成される、「カレッジバスケットボール委員会」を新たに設置する。同委員会では以下の3点を中心に調査を行い、改革を進めていく。

1. NCAA当局やその構成員、学生アスリート、指導者と外部との関係
2. NCAAとNBAの関係と、NBAのいわゆる"one and done" ルール(※)が、カレッジバスケットボールに与えた強い影響
3.大学とNCAA当局とが透明性があり、説明責任を果たす正しい関係を築くこと

この委員会は11月に始動し、4月に行われるミーティングで、どのようなルール作りをするか、委員会の方針、組織改革について決定する予定だ。我々は学生アスリートを正当に扱い、カレッジスポーツの健全性を守らなければならない。

※"one and done" ルール
NBAに入るには、年齢が19歳以上で、少なくとも1年は大学に在籍しなければならないとする規則。

■NCAAマーク・エマート会長の声明 全文和訳 ※NCAA公式HPより

「カレッジバスケットボール委員会」の設置について(2017.10.11)

FBIの調査によって明らかになった、カレッジバスケットボールの贈収賄事件に関するニュースは、NCAAの組織運営において、本質的な変革を早急に行う必要があることを明確にした。カレッジスポーツの名を汚す人々は、NCAAには必要ない。多くの指導者が規則を守っているが、カレッジバスケットボール界における暗黙の文化が、今回のような事件を引き起こしている。今回の事件に関与したような悪人たちを、カレッジスポーツから排除しなければならない。我々は決定的なアクションを起こすべきだ。中途半端な変革をしている場合ではない。

よって、私はNCAAとDivision Iの各理事会で、"カレッジバスケットボール委員会"の設置についての承認を取った。委員長を引き受けてくれたコンドリーザ・ライス氏と共に、組織において機能していない、危機的な状況の仕組みを調査する。委員会は元学生アスリートの経歴を持つ、高等教育、カレッジスポーツ、政界、ビジネス界のリーダーで構成される。そして、委員会では特に以下の3つの領域に焦点を当てていく予定だ。

1.NCAA当局やその構成員、学生アスリート、指導者と外部との関係。※以下を含む。
・アパレル会社や広告会社が、試合、リクリート及び選手の家族に対して不適当な影響を与えることなく、適切な方法でカレッジスポーツをサポートする環境を整えているか。
・コーチや関係者の学外での活動に問題がないか。
・エージェントやアドバイザーが、生徒やその家族を利用したりだましたりすることなく、NCAAの正当性を脅かすことなく活動しているか。

2.NCAAとNBAの関係と、NBAのいわゆる"one and done" ルールが、カレッジバスケットボールに与えた強い影響。また、それらを原動力にNCAA自身の正当性を保つためのルールをいかに変えていけるか。

3.大学とNCAA当局とが透明性があり、説明責任を果たす正しい関係を築くこと。この委員会において、現在のルール運用や正当なプロセスという面で権限の範囲が適切であるかどうか、また、両者の関係がカレッジスポーツにおいて詐欺や贈収賄を隠すことが出来ないということを保証するような調査方法や、文化的土壌や構造をもたらすものであるかどうかを調査することが求められる。

この委員会は11月に始動し、4月に行われるミーティングで、どのようなルール作りをするか、委員会の方針、組織改革について決定する予定だ。

我々は学生アスリートを正当に扱う必要がある。カレッジアスリートとしての公正さと機会、そしてNCAAのスタンダードを損ねる者を正しい方向に導く責任との両方の側面からカレッジスポーツの健全性を守る方法を見つけなければならない。我々はそれができると信じている。


■事件の概要

9月26日、米連邦捜査局(FBI)による2年間の捜査の末、FBIがカレッジバスケットボール指導者やドイツ・スポーツ用品大手アディダスの幹部など10人を、選手の契約に絡む贈収賄罪で刑事訴追したと明らかにした。罪状には贈収賄、共謀、詐欺罪が含まれる。

■金銭授受の具体例

・オーバーン大のコーチは、NBA入りが期待できる選手をファイナンシャルアドバイザーやアパレルメーカー関係者に紹介し、9万1500ドル(約1030万円)を不正に受け取るなどしていた疑い。
・アディダス社の幹部は、有望な高校生を同社が資金提供する大学でプレーさせ、NBA入りした際に同社と契約を結ぶ見返りとして、選手とその家族に10万ドル(約1100万円)を渡していた疑い。

■刑事訴追されたメンバー

【コーチ】
・※オーバーン大 チャック・パーソン氏
・アリゾナ大 エマニュエル・リチャードソン氏
・オクラホマ州立大 ラモント・エヴァンス氏
・南カリフォルニア大 トニー・ブランド氏

【メーカー】
・アディダス社 シニアディレクター ジェームス・ガット氏ら2人

【その他】
・代理人、財務顧問ら

※NBAペイサーズなどでスター選手として13年間プレーした後、カレッジバスケットボールのコーチに転身


■アディダス広報担当者による書面での声明

「当社は本日(9月26日)、連邦検察が当社従業員を逮捕したことを知った。状況の究明を進めている。不正行為があったとの認識はなく、理解を深めるため当局に全面協力している」


JCAとしてのPoint of View

今回の報道ではスキャンダルに関わった選手の名前は明らかにされていませんが、訴状では強豪ルイビル大の選手の名前が挙がっています。今夏、ルイビル大とアディダス社は、10年1億6000万ドル(約179億円)の契約を結びました。そして、アディダスが10万ドル(約1100万円)を渡した高校生は、ルイビル大への進学を決めたという米メディアの報道もあります。

強豪カレッジのコーチは、進学を希望する有望な高校生の周辺に強い影響力があります。メーカーが投資(スポンサーシップ)した大学に有望選手を集めるために、コーチや選手の親にお金を渡す。コーチは裏金を得るために人材の斡旋をし、選手のプロ入り後の将来までも決めてしまうという構図です。司法当局担当者は、「今回の訴追で描かれた事態は一つではない」とコメントしており、氷山の一角にすぎないという見方を示しています。今後、米カレッジ2大スポーツであるバスケットボールとアメリカンフットボールにおいて、他のメーカーや、コーチの事案にも広がりを見せるのかが焦点です。

これに対して、NCAAの基本理念にもなっている重要な役割の一つが「公平性の担保」であり、これまでも各大学への監査等で不正の取り締まりを行ってきました。しかし、水面下ではカレッジスポーツの贈収賄に絡む動きはうわさされており、今回の一件で明るみになってしまったかたちです。NCAAのエマート会長は組織改革を実行するという声明を出しており、状況を改善する実行力が伴うものかどうか、今後の対応が注目されます。

また、この事件の背景には「学生が報酬を得ることを認めない」という、NCAAのアマチュア規定があります。近年、学生側(OB含む)で労働組合の結成を求める動き、肖像権利用に対する賠償訴訟、奨学金の上限撤廃を求める訴訟などが起こっています。一部では「学生アスリートは労働者の権利を有する」いう判決も出ており、これらの裁判の成り行きについてもポイントとなります。

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